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各国報酬ガイドラインの翻訳 | ①【アイルランド】Visual Artists Ireland(VAI)による視覚芸術家(ビジュアルアーティスト)のための報酬ガイドライン

Text by 酒井志紋

翻訳

2024.3.28

各国報酬ガイドラインの翻訳 | ①アイルランド| Visual Artists Ireland(VAI)による視覚芸術家(ビジュアルアーティスト)のための報酬ガイドライン

翻訳元サイト:

https://visualartists.ie/payment-guidelines-for-professional-visual-artists-2/

報酬計算のためには下記の報酬計算表をご利用ください。各ステップを追うことをお忘れなく!

ヴィジュアルアーティストのための報酬計算表[ユーロ]

北アイルランド(英国)のガイドラインについてはこちら:

http://www.visualartists-ni.org

報酬計算表のための定義

謝辞

私たちは、アーティストや組織、そしてカナダのCARFAC、オーストラリアのNAVAを含む国際的なパートナー、そして国際芸術家協会の他の仲間たちの意見やオープンな姿勢、そしてこの包括的な情報の作成への協力に感謝する。また、バークレー校のGeneva Vogelheim氏には、私たちの調査に対し献身的に協力していただいたことに感謝を述べたいと思う。

特に以下の団体に感謝する: 126(ゴールウェイ)、The Crawford Gallery(コーク)、EVA(リムリック)、Highlanes(ドロヘダ)、IMMA(ダブリン)、Solstice(ナヴァン)、Temple Bar Gallery & Studios(ダブリン)、そしてThe Limerick City Arts Officeには、誠実かつオープンな対話と、非常に貴重な洞察ならびに意見を頂戴した。

背景

2012年10月から12月にかけて、Visual Artists Ireland(以下VAI)はアーティストが作品や展覧会に対して報酬を得ている現実について調査を実施し、積極的に展覧会を開催している147名のアーティストからアンケートに対する回答を得た。この調査では、アイルランドにおける展示や作品について、公的資金による非営利スペースと商業セクターの両方を考慮に入れている。

非営利での展示については、781の「展示機会」が実現したことになる。異なるアーティストが同じ展覧会に出展することもあるため、この用語を使用している。この調査では、アーティストに対しその年の上位5つの展覧会から得た展示報酬の詳細について質問した。

最初の調査の結果、調査対象となった580の展示機会のうち、79.66%が展示の対価をアーティストに支払っていないことが判明した。また作品の制作費を負担していないケースも多く、アーティスト自身が展覧会の運営費を負担しているケースも43.3%と多く見られた。そして77.8%のアーティストが、教育や福祉プログラムのための報酬を受け取っていなかった。このうち31.9%は、これらのイベントのための交通費を受け取っていた。

アーティストが展示や教育、その他のサポートやサービスを無料で提供することを期待されている状況は、今に始まったことではない。しかし、これまでは裏付けに乏しいものであった。今回の調査では、この国特有の実態が明らかになった。

ケーススタディ

アーティスト1:年齢層55~64歳、アーティストとしての活動を支えるための仕事を持つ。
– スタジオの賃料、暖房費、電気代は月250~299ユーロ
– 2011年から2012年にかけて、4つの個展と6つのグループ展を開催
– 個展のうち3回はアーティストフィーがなく、1回は500ユーロを支給
– 6つのグループ展(6人以上のアーティストが参加)のうち、1つは700ユーロの報酬が発生した
– いずれも制作費は支払われなかった
– 交通費を支給する会場もなく、展覧会の準備に必要な制作時間も考慮されなかった。またある展示会に付随した講演には追加報酬が支払われたが、それには交通費やその他特別手当も含まれていた
2011/2012年度における展示収入:1200ユーロ

アーティスト2:年齢層35~44歳、アーティストとしての活動を支えるための仕事をしている。
– パートタイムでスタジオを利用でき、スタジオの賃料は月100ユーロから149ユーロ
– 2011/2012年に個展を1回、グループ展を8回開催した
– 個展の参加報酬は1000ユーロだった
– 8回のグループ展のうち、1回は200ユーロの報酬だった
– 制作費は支払われなかった。運営費を負担するギャラリーもあったが、作家のポケットマネーで賄う所もあった
– ある会場では交通費が支給されたが、他の会場では支給されなかった。展覧会の準備に必要な制作時間を考慮したものはなかった。また講演のための追加料金は受け取っていなかった
2011/2012年度における展示会の収入:1200ユーロ

アーティスト3:年齢層45~54歳、フルタイムのプロアーティスト。
– パートタイムでスタジオを利用し、スタジオの賃料は月50ユーロ程度
– 2011/2012年に3回のグループ展を開催
– どの展覧会においても報酬は支払われなかった
– 一部の制作費については支払いがあり、すべてのケースで運営費が負担された
– 講演会には追加料金を受け取り、交通費を負担したのは1回のみであった
2011/2012年度における展示会収入: 0ユーロ

コンサルテーション

その後の追跡調査において、VAIは無報酬の原因を見つけるため、各セクターと一連の協議や対話に着手した。その結果、以下のような重要な回答が得られた:

・フルプログラムが求められる場合、アーティストだけでなく、その他すべての人に支払う報酬が不足している。
→例えば組織が要求したよりも少ない資金を受け取ったが、当初申請した通りのプログラムの完遂を期待されているような印象がある。
→「私は9つの展覧会を申請し、4つ分の資金を得たが、それでも9つの展覧会を開催することを期待されている」

・「スタッフへの賃金、施設賃料、光熱費を払わないと展覧会自体を開催できない。アーティストに支払う余裕もない」
→複合型芸術文化施設では、理事会や他の資金提供者が、視覚芸術は「安く提供できる」と期待しており、「報酬が発生する他の芸術形態」が受ける投資額に見合わないため、「価値を下げている」と指摘している。
→また、ビジュアルアーティストになぜ報酬が必要なのかという疑問もある。

・誰も報酬を受け取っていない
→より小規模な組織やアーティスト主導の新しい取り組みでは、設定した目標を達成するためにボランティアに依存することがある。つまり、このような機会をサポートしたいかどうか、アーティストに代わってボランティアをする側が価値判断を行う必要があるのだ。
→このような働き方は、新しい展示スペースにおいて浸透しているが、大きな組織にとって予算削減のための一つのベンチマークとして利用されている。

・私は他のアーティストに無報酬で仕事をさせることができる
→このような回答は増加しており、視覚芸術に特化していない団体に特に多い。視覚芸術におけるアーティストとの協働や、プログラミングの方法についての知識が不足しており、必要なもの、あるいは後回しにされているように見受けられる。

・参照可能な、支払についての物差しがない
→公表されているガイドラインがない。何年も前にEPR(展示会支払権)に向けた動きがあったが、現在ではそのような動きはなく、正確な条件やレベル、所有者を覚えている人はほとんどいない。ある複合型芸術文化施設からの具体的なコメントによると、「演劇や映画の関係者と仕事をする際には参考にできる支払レートがあるが、ビジュアルアーティストにはそれがないため、予算を立てるのが非常に難しい」とのことだった。

・“それが誰に支払われているのか、あなたは確認した方が良いかもしれない”
→私たちはこのような回答に出会うことが何度かあった。特に、ゲストキュレーターやアーティスティックディレクターが管理するプロジェクトで、セットプログラムを提供する見返りに一括で予算を受け取り、その中からアーティストへの支払に責任を持つ場合に多い。この場合、アーティストは常に報酬を得られているわけではないにもかかわらず、コミッショナーはそれが行われていると思い込んでいるのだ。

・”前例ではこうなっています、あるいはそう説明されています…”
→このような回答は、中堅の施設でも、予算管理の経験が浅いマネージャーを抱えるスペースでも見られるものである。これが彼らの正常な感覚であり、経験不足のために他の方法を検討することができないか、または現在のモデルが「問題ない」ものであるため、変化を考慮しようとしていないかのいずれかである。

ガイドライン

これらの発見による直接的な成果として、アーティストや芸術団体、資金提供団体および国際的な主要専門機関との協議により、会場とアーティストが公平な支払基準を計算し、プログラムおよびアーティストが非営利のスペースで行うさまざまな作業の予算を適切に確保できるよう、以下のガイドラインが作成された。

Visual Artists Irelandは、プロのアーティストの報酬に関するガイドラインを作成するために、アイルランド内外の調査を実施した。記載されている数字は、支払基準の指標となるものである。組織は、ここに示されるよりも多少であれば前後した金額を提示することができる。報酬の内容や水準は、最初のやり取りや契約書、そして広告などにおいて明確にする必要がある。

1. 芸術家
このセクションでは、アーティストまたは組織が、アーティストのキャリアと経験に関して明らかにすることで、アーティストの報酬レベルについての現在の状況が示される。

2. 団体・組織
このセクションは、主に3つのエリアに分かれる:
①年間総売上高に基づく組織の種類
②アーティストのキャリアと経験
③展示機会の種類
⑴個展
⑵10人以下のアーティストによるグループ展
⑶10人以下のアーティストによるグループ展
⑷複数の会場での展示
⑸新作を制作して展示するための補助予算のある展示
⑹既存作品を展示するための補助予算のある展示

・単発のフェスティバルとイベント
視覚芸術に特化したものであれ、一般的なものであれ、単発のフェスティバルやイベントは、メディアや専門家の知名度という点で、継続的なプログラムや存在感を持つものとは異なる動きをすると理解されている。
このセクションは、3つの主要な分野に分かれている:
①年間総売上高に基づく組織の種類
②アーティストのキャリアと経験
③展示機会の種類
⑴個展
⑵10人以下のアーティストによるグループ展
⑶10人以下のアーティストによるグループ展
⑷複数の会場での展示
⑸新作を制作して展示するための補助予算のある展示
⑹既存作品を展示するための補助予算のある展示

・公募プロジェクトー報酬の発生する、あるいは無報酬のもの
①年間総売上高に基づく組織の種類
②アーティストのキャリアと経験
③展示機会の種類
⑴個展
⑵10人以下のアーティストによるグループ展
⑶10人以下のアーティストによるグループ展
⑷複数の会場での展示
アーティストのキャリアと経験:このような機会では、応募したアーティストが平等に扱われることが前提になっている。経験を持つ者がそのイベントに参加するかどうかの決定は、アーティストに委ねられる。

・その他の報酬
このセクションでは展示以外の報酬について説明する。以下のようなものがある;
1. 制作費
会場に原価として計上される材料費と人件費
2. インストールにかかる費用
アーティストが会場の設置に立ち会うことを義務付けられている場合
3. プロジェクトの準備
委託されたプロジェクト、またはサイトスペシフィックなプロジェクト
4. プロジェクトの計画と会議
パブリックアートのコミッションや大規模な展覧会など、コミッショナーや専門家との綿密な打ち合わせや企画を必要とするプロジェクト
5. 旅費交通費
この手当は、公表されている公務員報酬から直接取得される。
6. アーティストによる対談
7. アーティストによるワークショップ
8. セレクションパネル
9. インタビューパネル
10. パブリックアートのコミッション報酬
これは予算全体の割合に基づいており、予算の投入と作業の量に基づいて計算される。
11. キュレーターとしてのアーティスト
これは予算全体に対する割合に基づいており、投入量と作業量に基づいて計算される。アーティストが単に作品を選択する場合は低い割合になるが、アーティストが契約交渉、発送の手配、インスタレーションのデザインやサポート、メディア管理などに関与する場合があるため、徐々に割合は高くなっていく。
12. 単発の「ムービーナイト」による映像作品の上映や、録音された音声作品の「再生」 – 1名~200名の観客に対するMPLC(Motion Picture Licensing Corporation)の報酬に基づく
13. 著作権使用料
展覧会やイベントの開催期間外におけるアーティストの著作物の継続的な使用に対応するため。これはカタログ、新聞・雑誌、商品化、インターネットについて、IVARO(The Irish Visual Artists Rights Organisation)がカバーしている既存の料金に基づくものである。