} 各国報酬ガイドラインの翻訳 | ④【イギリス】展覧会報酬について: アーティストと芸術団体のための a-n/AIR によるペイイング・アーティスト・ガイド(初版) - art for all

art for all

各国報酬ガイドラインの翻訳 | ④【イギリス】展覧会報酬について: アーティストと芸術団体のための a-n/AIR によるペイイング・アーティスト・ガイド(初版)

Text by 酒井志紋

翻訳

2024.9.24

原文:https://static.a-n.co.uk/wp-content/uploads/2016/10/Paying-Artists-Exhibition-Payment-Guide.pdf

a-nは、20,000人以上のプロのビジュアルアーティストを支援する英国最大の会員制組織です。a-nとアーティスト・アドバイザリー・カウンシル(AIR)を通じて、「ペイイング・アーティスト・キャンペーン」がメンバーのニーズと要望に応える形で2014年に開始されましたが、これは不十分な報酬の支払いがアーティストに与える影響を実証する調査によって起こったものでした。「ペイイング・アーティスト・セクター・コンサルテーション(2014‐2016)」は、a-nとAIRがDHAコミュニケーションズと共に実施し、あらゆる分野から約2,000人のアーティストの意見を集めました。 このコンサルテーションの結果は、ガイダンスとフレームワークに直接反映・実現されました。

展覧会報酬とは、アーティストに対する支払いのことであり、公的資金による展覧会の成功に対するアーティストの独創的な想像力とプロフェッショナルな貢献を評価するものです。 これは芸術における平等と多様性を支持する柔軟で公正なアプローチであり、芸術団体にアーティストと協働する際のベストプラクティスを定着させ、アーティストのキャリアを維持し、鑑賞者が人間の経験のあらゆる側面を表現する芸術を鑑賞できるようにすることに貢献します。

これは、展示する作品を設置するためにアーティストに支払うものでも、アーティストに通常支払われる日当の代わりでもありません(例えばコミッションやパブリック・トーク、レジデンス、参加型アートの実践、ワークショップ、コミュニティプロジェクト、ギャラリーの教育・学習プログラムの一環としての)。 また、基本的なプログラミングや組織運営に必要な費用、アーティストからの作品や著作権の購入に充てるものではありません。展覧会報酬とは、アーティストが無償で活動することを選択した(そしてそうする余裕がある)ときにそれを止めるものでも、展示スペースにアーティストを縛りつけるものでもないのです。

-誰を対象とするのか?-

このガイダンスは、視覚芸術を一般に紹介するための公的資金を受領しているアーティスト、及び常設或いは一時的な団体・プロジェクトを対象としています。 これらには、ギャラリーや美術館、アートセンター、スタジオ、アーティスト主導のスペース、フェスティバルにおける公開プログラムが含まれます(ただし、これらに限定はされません)。

このガイダンスは、このセクター(視覚芸術分野)とArts Council England(イングランド・アーツ・カウンシル)、Creative Scotland and Arts(スコットランド・クリエイティブ・アンド・アーツ)、 Council of Wales(ウェールズ・カウンシル)との協議により作成されました。

Arts Council of Northern Ireland (北アイルランド・アーツ・カウンシル)が推奨する、北アイルランドにおける公正な展覧会出展料の支払いに関するガイダンスについては、アイルランド| Visual Artists Ireland(VAI)による視覚芸術家(ビジュアルアーティスト)のための報酬ガイドラインをご覧ください。

限られた資金内で活動するアーティスト主導のグループについては、ベストプラクティスとは別途のアーティストの支払いに関するマニフェストである「Artist-Led Manifesto(アーティスト・レッド・マニフェスト)」に見ることができます。

本ガイダンスは、あらゆるバリエーション、状況、事態をカバーすることはできません。 ガイダンスを注意深く読み、これが意図する精神、すなわち大多数の展示状況に適用可能な実践的ガイダンスおよびベストプラクティスとして解釈してください。

後半の用語集には、主要な用語の概要が記載されています。

アーティストと芸術団体のための展覧会報酬ガイダンスにおける4つの基本原則

〈アーティストへの助言〉

1.透明性

履歴書、ブログ、ウェブサイトやポートフォリオへのリンクなど、あなたの専門的な実践経験を証明できるものを団体に確認してください。 その団体の規模や領域など、あなたへの支払い能力を測るために、その団体のプログラムや展覧会報酬の方針についての情報を求めましょう。 「出展料の支払い方針はどうなっていますか?」と直接尋ねてみてください。

2.予算

a-nのアーティストフィーツールキットやその他の利用可能なツールを使って、予算や提案書を作成する前や出展料について交渉する前に、あなたへの報酬の必要性を確認し、計算してください。その必要性、専門的な経験や評判、提案される展覧会の種類、主催者の「展覧会報酬」カテゴリーを考慮して、予算に含めるのが妥当と思われる支払額を特定し、交渉するために後述の「展覧会報酬」フレームワークを使用してください。 事前に明確な展示企画書と予算を主催者に提出しましょう。展覧会報酬の予算は、他の制作費や搬入などの日当とは別枠にしましょう。 ベストプラクティスとは、出展料が主催者によって予算化され、あなたに支払われることを意味します。現金以外の利益を受け取る場合、これは予算への財政的貢献として記録されるべきです。もしあなたが主催者のために新作の制作を委託されているのであれば、これは展覧会報酬の支払いの妨げにはなりません。予算は、あなたの「ボトムライン(最低報酬額)」を明確にするものであり、財政的な取り決めについてどこまで交渉する意思があるかを示すものです。

3.交渉

展覧会報酬に関する合意を主催団体との最優先事項としてください。そうしないと、展覧会 の他の面で合意するのに時間を浪費し、そのせいで支払いの合意ができないかもしれません。 展覧会報酬は、予算編成の際に確認した変動要因に応じて、上乗せまたは減額の交渉が可能です。 提示された支払額が、あなたが公正であると評価する金額と合っていれば、交渉する必要はないかもしれません。 提示された報酬額が公正でないと思われる場合は、あなたの支払い要求を満たすためにその団体ができることを探してみるか、利用可能な予算に照らして提案されている展覧会の性質や範囲を見直してください。どのようなものが現金以外の利益を構成するのか、またどのような場合に考慮すべきなのかについての助言は、後述の用語集または「Artist-Led Manifesto (アーティスト・レッド・マニフェスト)」を参照してください。 芸術団体に対する公的資金の水準はさまざまであり、特定の用途のために制限されている場合があることを認識してください。そのため、支払いの財政的背景を十分に理解するためには、個人的な交渉プロセスが重要です。 展覧会報酬がない場合、またその団体のプログラムに補助金を出すよう要求されていると思われる場合、あるいは単に提示された金額では展覧会を引き受ける余裕がない場合は、展覧会のオファーを断る準備をしてください。

4.確認書

合意した財務および展示の詳細について、書面による確認を求めてください。 これは、契約書(a-nの契約書ツールキット内のExhibition agreement(展覧会契約書)を使用して、特注の契約書を作成することができます)または同意書の形式でなければなりません。 契約書の形式がどのようなものであれ、合意された作業スケジュールと納品日、支払われる金額と日付(展覧会報酬と合意された現金以外の利益の価値を含む)を明確に定める必要があります。 団体から報酬についての確認書が提出されない場合は、合意した内容を要約し、それを団体と共有することができます。
ここに示すプロセスは、相互に尊重し合うパートナーシップを促進することで、どちらか一方に問題が生じることを未然に防ぐことを目的としています。問題がある場合はその組織に、さらに必要であればその組織の理事会や諮問グループに提起してください

〈展覧会主催団体側への助言〉

1.透明性

公正な展覧会報酬の支払いに対する団体の明確な方針を公表することで、アーティストとの業務慣行において透明性を保ちましょう。 これは、ウェブサイト上で関連情報を自由に利用できるようにするか、「展覧会報酬の支払い方針」を設けることで行うことができます。 どのような形であれ、アーティストとの協働やアーティストへの支払い方法、あるいは公正な展覧会報酬に向けた取り組みを証明するために、アーティスト、資金提供者、利害関係者の求めに応じて公開できるものでなければなりません。団体によっては、この情報を公正な賃金、または平等と多様性の方針に含めることを選択する場合もあります。透明性をサポートする組織情報には、あなたの団体が年間提供する展覧会の平均数、範囲、種類、協力するアーティストの種類とその理由、展覧会の一般的な資金調達方法、年間展覧会のプログラム予算、アーティストへの年間展覧会費用、あなたの組織が大まかに後述するフレームワークのどのカテゴリーに当てはまるかを共有することが含まれます。もし、あなたの団体が固定料金しか支払わないのであれば、その金額を明記し、あなたたちの方針または声明に記載し、最初にアーティストと共有してください。 アーティストにアプローチする際には、どのように資金を調達するのか、すでに調達している資金額やまだ確保できていない資金額も含め、具体的な展覧会の規模や範囲について明確にしてください。アーティストには、展覧会の企画書とともに予算を提出するよう求め、その中で展覧会ペイメントを特定するよう求めましょう。利害関係者への組織、理事会、財務報告、および資金提供者へのプロジェクト報告に展覧会報酬を含めることで、ベストプラクティスを証明しましょう。

 

2.予算

展覧会報酬フレームワークを使用して、組織の年間展覧会プログラム予算、提案する展覧会のタイプ、アーティストの経験や評価に照合し、公正な展覧会報酬額を指標化し、特定してください。

ベストプラクティスとは、展覧会費用が予算化され、アーティストに支払われることです。 もしアーティストが展示会費用の全部または一部を免除することを選択した場合(そしてその余裕がある場合)、これは予算への財政的貢献として記録されるべきです。

予算および管理会計に、展覧会制作費、材料費、輸送費、設置費、技術費などとは別に、アーティストへの「展覧会報酬」を含めること。

非現金給付に関するベストプラクティスについては、後述の用語集、またはアーティストへの支払いに関するマニフェスト「Artist-Led Manifesto (アーティスト・レッド・マニフェスト)」を参照してください。

アーティストにあなたの団体のための新作を依頼する場合、展覧会報酬が除外されるわけではありません。 コミッション料が何を含み、何を含まないのかををアーティストに確認してください。

3.交渉

アーティストと打ち合わせを行い、まず展覧会報酬について、次に提案された展覧会制作費(材料、施設、輸送、テクニカルサービスなど)について話し合い、合意します。 最初に報酬額に合意し、和訳にをすることで、その後の話し合いはすべて展覧会制作費に集中することができます。

固定料金のみを提示するのでなければ、(アーティストの経験に応じて、また予算の許す限り)上乗せ交渉も辞さない覚悟で臨みましょう。

アーティストが、あなたたちが公正なオファーをしたと考えている場合、展覧会支払いについて交渉する必要はないかもしれません。 そうでない場合は、実現したい展覧会の性質と範囲を、利用可能な予算と照合し話し合ってください。

すべてのアーティストは、あなたの組織で展覧会を行う能力に影響を与える可能性のある異なる社会的、経済的な状況を持っています。 個人的な交渉を通じて、アーティストの個々の経済的状況を認識することが重要です。

4.確認書

合意した財務および展示内容の確認書を提出してください。 これは正式な契約書(契約書ツールキット内のExhibition agreement(展覧会契約書)を使用し、特注の契約書を作成することができます)または同意書とすることができます。

どのような形式を用いるにせよ、合意された作業スケジュールと納品日、支払う金額とその詳細(展覧会報酬と合意された現金以外の利益の価値を含む)を明確に定める必要があります。

ここに示したプロセスは、相互に尊重し合うパートナーシップを促進することで、どちらか一方に問題が生じることを未然に防ぐことを目的としています。万が一問題が発生した場合は、苦情処理のためのスタッフや手段を用意するか、理事会または諮問グループに直接連絡しましょう。

展覧会報酬についてのフレームワーク

-どのように機能するのか-

このフレームワークは、スコットランド、ウェールズ、イングランドのビジュアルアートの団体を4つのカテゴリーに分類しています。 それぞれのカテゴリーには、アーティストと団体の双方が適切なカテゴリーを識別できるよう、簡単な説明が付されています。

各カテゴリーには、新作と既存作品の2つの展覧会報酬が表示されます。

新作とは、過去に展示されたことがなく、アーティストが最近制作し、主催団体が展示のために選んだ作品のことを指します(団体が特別に委託し、費用を支払った作品とは異なります)。 用語集参照:コミッション(委託)

既存作品とは、アーティストが以前に制作した作品で、以前に展示された可能性があり、該当する展覧会のために制作されていないものを指します。

このフレームワークは、アーティストと主催団体の双方が使用可能で、公正な展覧会報酬の支払いにつながるようデザインされた交渉のためのガイダンスとして、ビジュアルアートの展覧会の報酬額を表しています。

報酬額は、前述の「予算」の項目で確認された要因に応じて、交渉によって増額または減額することが可能です。またすべての金額に付加価値税は含まれていません。

このフレームワークは、ビジュアルアートを一般向けに紹介するための公的資金を受けているすべての常設または一時的な組織に適用されます。 これには、イングランド、スコットランド、ウェールズのギャラリーや美術館、アートセンター、スタジオ、アーティスト・スペース、フェスティバル(用語集「団体/組織」を参照)が含まれます(ただし、これらに限定されるものではありません)。

この展覧会報酬のガイドおよびフレームワークは、2017年から2022年の実施期間中に、報酬についてのアーティスト・ワーキンググループからの専門家の意見や、a-nが実施したセクター調査から情報を得て、見直しと補強が行われます。ガイドの改訂版は必要に応じて発行され、フレームワークの改訂は実施期間の終了時に行われます。

アーツカウンシル・イングランド、クリエイティブ・スコットランド、アーツカウンシル・ウェールズは、2017年以降に資金提供を申請する団体に対し、アーティストへの公正な支払いを証明することを期待します。

フレームワークの分類

アーティスト主導およびプロジェクト資金による展覧会: 年間芸術プログラムが5万ポンド未満の組織(アーティスト主導のスペース、プロジェクト、または5万ポンドまでの公的プロジェクト資金に依存したプログラムであることが多い)は、公正な報酬の原則をどのように組み込むかについてのアドバイスとして、アーティスト主導のマニフェストを参照すべきです。

Category A 

新作:£1,500 | 既存作品:£750

これは、資金援助を受けている団体の中で圧倒的に多いグループです。一般向けに展覧会を開催している団体のうち、ギャラリーがほぼ半数を占めますが、スタジオや開発組織も含まれます。これらの団体はイングランド、スコットランド、ウェールズ全土に分布しており、その大半はロンドン郊外に位置しています。年間6回以上の展覧会を開催することが多いものの、会員やアソシエイトのためなど、よりコンパクトな、あるいは短期間の展覧会を開催する場合もあります。年間展覧会プログラムの予算は、組織のタイプや資金調達モデルの多様な組み合わせを反映し、5万ポンドから15万ポンドの範囲になると思われます。

Category B 

新作:£2,000 | 既存作品:£1,000

このカテゴリーに含まれる団体の3分の1は、主にギャラリーやアートセンターですが、スタジオ、フェスティバル、一部のビジュアルアート開発団体も含まれます。大多数(77%)はロンドン郊外にあります。 年に4~6回のメインスペースでの展覧会が開催されますが、小規模なものもあります。年間展覧会プログラム予算は、15万〜30万ポンドと思われます。

Category C

新作:£4,000 | 既存作品:£2,000

このカテゴリーは、主に大規模なギャラリーの小さなグループと、いくつかの大規模な複合アートセンターが該当します。大多数(72%)はロンドン郊外にあります。年に4回以上、メインスペースでの展覧会を開催する可能性が高く、年間展覧会プログラムの予算は約£30万から£50万ポンドと思われます。

Category D

新作:£6,000 | 既存作品:£3,500

このカテゴリーに該当するのは、非常に少ないですが一般向けに展覧会を開催している主要なビジュアルアート団体です。一般的には大規模なギャラリーが多く、その3分の1はロンドンにあり、残りは主に主要都市にあります。少なくとも年間6回以上の大規模な展覧会を主催し、同時に複数の大規模な展覧会を開催する能力を持つことが多いです。年間展覧会プログラム予算は50万ポンドから100万ポンド以上になります。

上記フレームワークカテゴリー別組織タイプ内訳

カテゴリーA:48%

カテゴリーB:29%

カテゴリーC:15%

カテゴリーD:8%

すべてのグループ展において、支払いは最大10名までのアーティスト数で分割されるべきです。

カテゴリーAの7人以上のグループ展、またはカテゴリーを問わず10人以上のグループ展では、どのアーティストも一人100ポンドを下回ってはなりません。

コミッションやレジデンシー、参加型のワークショップ、コミュニティプロジェクト、ギャラリーの教育活動、パブリックトークなどへの公正な報酬に関する包括的なガイダンスは、a-nの「ビジュアルアーティストのための料金と日当に関するガイダンス」(後述)にあります。

注:展覧会報酬のフレームワークの数値は、(i)「アーティストへの支払い」部門の協議を通じて展覧会組織から報告された料金、(ii)定期的に資金提供を受けている、166の展覧会主催団体からの匿名化されたデータ公共部門データ、(iii)展覧会主催団体の平均的な年間展示要件と売上高、および異なるキャリア段階、経験、練習費用などの要因を反映したアーティストの平均的な期待収入からなる計算式に基づいています。

 

Glossary 用語集

アーティスト: 公に発表するための新作または過去に制作したアート作品を生み出す専門的な芸術家のこと。ファインアートや映画、写真、パフォーマンス、サウンド、その他マルチメディアなど、さまざまなメディアを駆使し、さまざまな展覧会主催者やコンテクストのために活動するビジュアルアーティストを含む。

アーティスト主導(Artist-led):アーティストによって生み出される様々な活動の総称。 伝統的なギャラリースペースに類似している場合もあれば、アーティスト自身によって定義された異なるアプローチをとる場合もある。アーティスト主導のコンテクストにおける展覧会報酬のベストプラクティスの原則を適用するためのガイダンスについては、アーティスト主導のマニフェスト「Paying Artists’ Artist Led Manifesto」を参照のこと。

予算:計画を立て、進捗状況を評価し、リスクを最小化するための一定期間における収入と支出の見積。重要な変更がある場合は、できるだけ早く関係者に報告すること。ベストプラクティスのために、展覧会経費は展示会予算およびプロジェクト予算に別枠で計上し、毎年報告すること。

コミッション(委託):団体からアーティストに、展示のための新作を依頼すること。依頼する団体は、作品のリサーチや開発、制作にかかるアーティストの時間を考慮し、アーティストへのコミッション料を含むべきである。 また、材料費、機材費、外部委託費、その他作品の実現に必要な費用が含まれる場合もある。加えて、アーティストの報酬については他の制作費とは別に予算枠を設け、すべて事前に合意しておく必要がある。すべてのビジュアルアートのコミッションが展覧会に結びつくわけではないが、そうである場合は、コミッションフィーが何の費用に当てはまり、何が当てはまらないかを明確にする必要がある。コミッションの方針に応じて、「コミッションフィー」は展覧会報酬とは別に支払われる。

契約書または同意書:契約書クイックガイド、展覧会契約書クイックガイドを参照するか、a-nの契約書ツールキット内の展示会契約書を使用して既成の契約書を作成する。

展覧会報酬:アーティストの新作または既存の作品が公募展に選ばれた場合、その知的貢献が認められ、支払われるもの。 展覧会報酬は、アーティストに通常支払われる日当とは区別される。例として基本的なプログラムやオーガナイズにかかる費用、サービス、制作費、設置費、輸送費、コミッション、レジデンス、ワークショップ、参加型の実践や教育活動、トークなどの活動が挙げられる。

展示企画書:アーティストによって書かれるべきもので、展示スペースのサイズと規模を反映し、以下を含む:提案された作品の説明、アーティストの略歴または履歴書、ポートフォリオへのリンク、関連作品または最近の作品の画像、展示に必要なスペースの見積もり、展示実現に必要な予算の明細。

固定料金:いくつかの団体は、展示するすべてのアーティストに固定した標準的な報酬を支払っている。 ベストプラクティスのためには、金額は展覧会報酬フレームワークの広範なガイダンスの範囲内であるべきである。

交渉:多くの場合、二者が金銭的な条件について合意に達するための標準的なプロセスのこと。交渉に必要な情報の準備と収集、会うことについての合意、提案またはオファー案の交換、提案についての話し合い、さらに情報を提供する機会、交渉と問題解決(取引成立のために、双方が確認した変動要素を用いて用意する「ギブ・アンド・テイク」のこと)、合意、また理想として双方が署名した書面による正式な文書化を含む。契約書または合意書を参照。交渉のためのクイックガイドを参照。

非現金給付(Non-cash benefits):アーティスト主導の団体やグループなど、非常に限られた資金で活動する団体によっては、展覧会報酬の代わりに非現金給付を提供する場合がある(例えば、専門的な能力開発や指導の提供や、スタジオや作業スペースなどアーティストにとって負担となる特定の施設へのアクセスのオプションなど)。

非現金給付が提供される場合、それはアーティストにとって実際的または専門的に価値があるものでなければならず(組織が日々の運営費の一部として予算を組むべき活動やサービスではない)、同等の現金価値を予算に計上しなければならない。 組織の年間展覧会予算が50,000ポンド未満の場合は、Artist Led Manifestoを参照すること。

ベストプラクティスとして、公的資金を受けている組織では、現金以外の利益を現金報酬の代わりに使用すべきではない。

団体/組織:アーツカウンシル、地方自治体、高等教育機関などからの公的資金を受け、プログラムの一環として視覚芸術の展覧会を開催する団体またはプロジェクト。ギャラリー、美術館、アート・センター、スタジオ、ワークショップ、フェスティバル、アート・プロデューサー、アート・プライズ、ビジュアルアート開発組織、その他の非省庁公共団体(例:フォレストリー・コミッション、ナショナル・トラスト)などが含まれる(ただし、これらに限定されない)。

資金提供者:アーツカウンシルや地方自治体、高等教育機関、その他の非省庁公共団体などに代表される、政府当局、機関、特殊法人、助成金提供者のこと。

方針:公的資金を受けている団体(多くの場合慈善団体であるが、必ずしもそうではない)は、その活動や支払い慣行において透明性を保つことで、優れた和訳にを実証している。 公的資金提供者は多くの場合、公正な支払い、平等、多様性へのアプローチを明確に示す方針の作成を団体に求める。 これらの方針は、団体がどのように展覧会報酬のベストプラクティスに取り組んでいるかについての声明を含むように適合されることもあれば、組織あるいは団体がアーティストとの協働や支払い方法について利害関係者に知らせる別の声明を作成することもできる。

Exhibition Payment: The a-n/AIR Paying Artists Guide For artists and exhibiting organisations (First Edition), 2016年10月12日発行

© a-n The Artist’s Information Company

 

謝辞

アーティストへの報酬に関するコンサルテーション、およびこのガイダンスと報酬フレームワークの作成にご協力いただいた、アーティスト、キュレーター、ギャラリーディレクター、アートオフィサー、資金提供者、政策立案者、国際的なパートナー、支援団体、政治家の方など、何百人もの方々に感謝します:

AIR Council | a-n Members | a-n Board | a-n Staff and Freelancers | DHA | Noel Kelly | Paying Artists Campaign Team | Susan Jones MBE & Richard Padwick
Conrad Atkinson | Jeremy Deller | Margaret Harrison | Richard Layzell | Yinka Shonibare MBE | Joanne Tatham | Jane Wilson
Baltic Centre for Contemporary Art, Gateshead | CCA, Glasgow | The Collection, Lincoln | Fabrica, Brighton | Fruitmarket Gallery, Edinburgh | g39, Cardiff | Impressions Gallery, Bradford | Jerwood Space, London | Modern Art Oxford | The Showroom, London | Whitstable Biennial
Arts Council England | Arts Council of Wales | Creative Scotland
Artists Union England | Contemporary Visual Arts Network | Scottish Artists Union | Scottish Contemporary Arts Network | Visual Artists Ireland

作成に当たり、以下の団体を参照しました:

CARFAC (Canada), Danish Visual Artists BKF, Finnish Arts Promotion Centre, KRO/ KIF (Sweden), Arts Council of Norway, Platform BK (Netherlands), NAVA (Australia), VisArte (Switzerland), W.A.G.E. (New York).

附録:ビジュアルアーティストの報酬と日当に関するガイダンス(2023年)

これは、芸術予算編成の指針として、またコミッション、レジデンス、コミュニティ・プロジェクトなどの短期契約において、ビジュアルアーティストが適正な報酬を交渉する際に役立つ日当のサンプルです。

以下の表は、コミッション、レジデンス、コミュニティ・プロジェクト、ギャラリー教育など、アーティストのキャリア・ステージを反映したアーティストのギャラの枠組みを示したものです。アーティストのキャリアステージ、経験レベル、諸経費を反映し、また個人事業としての性質とコストを考慮し、アーティストの活動を比較対象となる職業と一致させてください。

日当はアーティストの年間有給労働日数177日を基準としています。この数字は、仕事の売り込みや入札に費やした時間、スタジオやリサーチに費やした時間、トレーニングやプロとしての能力開発に費やした時間、また管理・経理、病気、家族の約束、休日などを考慮したものとなっています。アーティストの仕事日数が少なくなりそうな場合は、それに応じて日当を増額することができます。この金額には、プロジェクト固有の経費と付加価値税(VAT)は含まれません。

これらの料金は一般的な目安ですが、各アーティストがそれぞれの状況や諸経費を考慮し、仕事の見積もりを作成する際には、The artist’s fees toolkitを使用して個人的な日当を計算することをお勧めします。

* アーティストが10年以上の経験を積めば、そのアート界における実績やユニークな属性、市場原理など、その他の外的要因によって請求できる料金は変動します。

このガイダンスについて

a-nは、2004年にアーツカウンシル・イングランドから初めて資金援助を受けて以来、一貫してサンプルデイレートを発表しています。これらの料金は、アーティスト、資金提供者、委託者、雇用者に、予算編成や見積りのための幅広いガイダンスを提供するものです。定期的な見直しと更新により、公表されているサンプルレートは、比較対象となるプロフェッショナルとの同等性を保っています。

このガイダンスでは、教師の給与を比較対象としています。その根拠として、教師は通常卒業生であり、多くの場合追加の資格も持っているため、研修期間は4年間となり、多くのアーティストと同様であること、アーティストはワークショップの指導など、教師と同様の仕事を請け負うこともあること、アーティストに必要なマネージメントスキルの多くは、教師が使用するものと同様であること、などが挙げられています。またアーティストに必要なマネージメントスキルの多くは、教師が使うものと類似しています。

アーティストがこのような料金を使用する場合、「The Code of Practice for Visual Arts」(視覚芸術のための行動規範)及びアーティスト、コミッショナー、雇用者のためのその他の専門的実践文書(www.a-n.co.uk)に規定されているように、適切な専門家としての行動が前提となります。

ペイイング・アーティスト・キャンペーンの成果として作成されたこのガイドには、公的資金による展覧会への貢献に対する手数料として、アーティストへの支払いに関する一連の提案(150ポンドから6,000ポンドの範囲)が含まれており、幅広い展覧会のシナリオと、その履行のためのガイダンスが網羅されています。