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各国報酬ガイドラインの翻訳 | ③ 【スウェーデン】MU協定 創作者の参加・展示報酬の権利に関する協定 2023年版(スウェーデン語版・英語版より抄訳)

Text by 石塚まこ

翻訳

2024.4.1

創作者の参加・展示報酬に関する協定(MU協定)

スウェーデン芸術評議会が代理を務めるスウェーデン政府と、スウェーデン芸術家協会、スウェーデン イラストレーター・グラフィックデザイナー協会、およびスウェーデン写真家協会の間で締結。

協定の目的と範囲

この協定は、国の主催者が展示会での作品の展示および/または実演について、創作者と交渉し、報酬を支払う義務を規定する。本協定は、所属組織、居住地、国籍に関係なく、存命する創作者に適用される。

本協定は、国以外の主催者に対しても同様に、創作者の作品展示における条件および報酬に関する業界の良き慣行の確立を目的とする。

用語定義

この協定では、以下の定義を用いる。

主催者:作品展示会を主催する、もしくは施設や場所を提供する、政府当局または政府機関。

個別展示契約:主催者と創作者との間で交わされる、展示会の条件に関する契約。

参加報酬:会期前、会期中、会期後の創作者の作業への代金など、主催者が展示任務に対して創作者に支払う報酬。規定対象となる参加の例として、展示会の制作、新作の制作、カタログ、設営/陳列、ミーティングやオープニング、プログラム活動への参加、ポストプロダクションなどに伴う創作者の労働時間などが挙げられる。

MU協定:スウェーデン政府と協会間の協定。

協会:スウェーデン芸術家協会、スウェーデンイラストレーター・グラフィックデザイナー協会、およびスウェーデン写真家協会。

当事者:この協定に署名した当事者、すなわちスウェーデン芸術評議会が代理を務めるスウェーデン政府、スウェーデン芸術家協会、スウェーデンイラストレーター・グラフィックデザイナー協会、スウェーデン写真家協会。

制作費:展示会のための新作制作に伴う、材料および同等のものへの費用。

創作者:アーティスト、写真家、イラストレーター・グラフィックデザイナー、工芸家、デザイナー、またはその他の作品を創造した者。

展示会:一般またはより幅広い私的な団体がアクセスできる、作品鑑賞および/または実演。

展示報酬:スウェーデン国内外において、開催時に創作者が所有している作品の展示に対する、存命の創作者への報酬。

展示会費用:運送、保険、移動、技術設備、設営などの展示会に関連する費用。

作品:視覚芸術、写真、イラスト、工芸品、映像、パフォーマンス、またはその他の方法で表現された作品で、文学芸術作品著作権法(1960:729)の第1条および第49条aの対象となるもの。

1 § MU協定の内容

MU協定では、以下を規定する:
創作者が所有する作品の展示に対して、創作者に展示報酬を支払う主催者の義務。
創作者に妥当な参加費を交渉する、また展示費用や制作費について交渉する主催者の義務。
個別展示契約の内容。
中断または中止された展示会、盗難または破損、リファレンスグループ、主催者と創作者間の紛争、および契約の期間、終了、および最終規定。
別紙「展示報酬 料金表」に、さまざまな水準の展示報酬を定める。

2 § 主催者の義務

展示会の主催者は、創作者が所有する作品を展示する際には、MU協定を適用しなければならない。MU協定は、主催者に対する義務である。
主催者は展示会前に十分に余裕を持って創作者と交渉し、書面による個別展示契約を結ぶものとする。

3 § 展示報酬

展示会の主催者は、別紙「展示報酬 料金表」に従い、創作者に出展費を支払う責任を負う。主催者と創作者は料金表に記載されているよりも高い出展費に合意することができる。

料金表の金額は消費者物価指数(CPI)に合わせ、2027年に初めて引き上げられ、その後は3暦年ごとに見直される。CPIを指数化する場合には、2023年を基準年とする。スウェーデン芸術評議会は、これが行われていることを確認するものとする。金額は、100スウェーデンクローナ単位に切り上げられる。

創作者に対して最低でも別紙「展示報酬 料金表」に基づく展示報酬額への権利を付与しない契約条件は、創作者に対して効力を持たない。展示報酬は合意により免除したり、創作者の作品や展示会に関連する費用への支払いなどで賄って換算することはできない。

主催者は、以下の場合には、展示報酬を創作者に支払う義務を負わない:
展示が生徒・学生の教育に関連している場合において、就学中の生徒・学生が創造した作品の展示。
主催者が作品の選定・評価を行っていない作品の展示。
18歳までの児童・青少年が創造した作品の展示。
主催者の教育活動の一環として制作された作品の展示。

4 § 参加報酬

主催者は、創作者と妥当な参加報酬について交渉し、合意する責任を負う。

5 § その他の費用

主催者と創作者は、展示会費用の負担について合意しなければならない。これらの費用は、主催者と創作者との間で別段の合意がない限り、主催者の負担とする。

主催者と創作者は、新作の制作費の負担について合意しなければならない。

6 § 個別展示契約の内容

主催者は、展示会前に十分余裕を持って、展示会に参加する各創作者と交渉し、書面による個別展示契約を結ぶものとする。複数の創作者で一つの芸術性が構成される展示会の場合、共同展示契約を結ぶことができる。

主催者と創作者との間の個別展示契約においては、以下の事項を規定する:
別紙「展示報酬 料金表」に定めたものを最低支払額とする、創作者の展示報酬
創作者の参加報酬
展示会費用
展示会のための新作制作にかかる、制作費およびその他の条件
創作者の作品の著作権使用(別途規定しない限りにおいて)
創作者に金銭的報酬を報告する時期と形式
さらに、個別展示契約には、展示会の時間、場所、担当主催者、参加創作者、搬入出時期、保険金額とそのカテゴリーから算出した展示報酬を示した作品リストを明記した、展示会の説明を含めなければならない。その他の重要な合意事項も規定する必要がある。

MU協定の当事者は、主催者がMU協定に従った条件を含む契約書テンプレートを作成するか、または各協会および/または当事者が共同で作成した契約書テンプレートを個別展示契約の基礎として使用する必要がある。

7 § 展示会が中断または中止された場合

主催者の責に帰すべき事由により、主催者が展示会を開催できない、または開催しない場合、主催者は創作者に対して、合意した展示会に関する参加と経費、および予定されていた全期間に対しての展示報酬を補償しなければならない。

8 § 盗難または破損の場合

破損や盗難を防止するための安全対策は、主催者が責任を持って決定するものとする。主催者は、主催者が責任を負う期間中の作品の盗難、破損等により生じた損害に対して、創作者に賠償しなければならない。

9 § MU協定のリファレンスグループ

MU協定がどのように適用されるかを調査する目的において、当事者は共同でリファレンスグループを任命するものとする。リファレンスグループは、MU協定の適用に関して、原則に基づいた指導的声明を発表することができる。

リファレンスグループは7名で構成され、そのうち3名は協会によって任命され、3名はスウェーデン芸術評議会によって任命される。当事者は共同で7人目の委員を任命する。スウェーデン芸術評議会の代表がこのリファレンスグループの議長を務める。

リファレンスグループは、少なくとも年2回の会議を開催しなくてはならない。スウェーデン芸術評議会が召集するものとする。いずれかの協定当事者が要請した場合にも、リファレンスグループを召集することができる。会議は、議事録に記録され、すべての協定当事者が調整しなくてはならない。

10 § MU協定の適用性および解釈に関する問題

創作者または主催者には、リファレンスグループにMU協定の適用性と解釈について問題提起する機会があり、リファレンスグループは原則に基づく性質の指導的声明を発表する場合がある。

11 § 契約期間と終了

本協定は、政府による協定の承認を条件として発効する。本協定は、政府が決定した日に発効し、相互の終了催告期間は6か月とし、追って通知があるまで有効である。本MU協定が発効すると、以前に適用されていたMU協定に優先する。本MU協定の発効前に締結された個別展示契約については、従前のMU協定に準じる。政府による協定の終了は、全協会に適用される。協会による協定の終了は、協会が共同で行わなければならない。

ストックホルム 2023年10月13日

スウェーデン政府を代表して

スウェーデン芸術評議会 事務局長 
カイサ・ラヴィン

団体を代表して

スウェーデン芸術家協会 会長 
サラ・エドストローム
スウェーデン写真家協会 会長 
パウリナ・ホルムグレン
スウェーデンイラストレーター・グラフィックデザイナー協会 会長 
ジョセフィン・エングストローム

別紙 – 展示報酬 料金表

2024年1月1日から2026年12月31日まで有効。

この別紙の料金表は、MU協定に従い、主催者が創作者に支払う展示報酬の決定において、基礎となるものとする。
展示報酬は、MU協定に従い、主催者が存命の創作者の所有する作品の展示および/または実演に対して支払う報酬である。

A. カテゴリーの決定

展示報酬の決定にあたり、主催者は、前会計年度の展示会来場者数に基づき(特別な場合を除く)、4つのカテゴリーに分類される。

展示会の来場者とは、以下を指す:
主催者への入場料の支払いを伴うエリアへの来場。
主催者に入場料を支払う必要があるが、展示会が入場料のないエリアにある展示会への来場、または
主催者の入場無料の展示会への来場。
他の事業と作品が場所を共有する小規模な展示会を開催する主催者の場合、事業への来場者数に関係なく、カテゴリー4が適用される。

複数の会場での展示会

複数の会場で開催される展示会の場合、各会場はそれぞれ別の展示会と見なし、展示報酬の額は、主催者の属するカテゴリーによって異なる。

展示会を開催する主催者以外の者によって展示会がプロデュースされる場合、展示会をプロデュースした主催者は、展示を開催する主催者がMU協定に従って創作者と交渉し、書面による契約を締結することを保証しなければならない。

複数の会場で事業を行う主催者

複数の会場で恒久的な事業を運営する主催者の場合、各会場は別の主催者とみなす。

主催者が展示会に関連する業務を通常の会場から一時的に移転する場合、主催者の一般事業の会場と同じ料金が適用される。

B. カテゴリー内の展示報酬水準

展示報酬は、以下に基づいて計算される:

 A 展示会の開催期間、および
 B 展示会の展示作品を所有する存命の創作者の数。

主催者と創作者は、料金表に記載されている金額よりも高い展示報酬が創作者に支払われることに合意することができる。

展示期間の計算

展示報酬を設定する際、展示期間は、開始暦週ごとに計算される。展示会が土曜日に開始される場合、第一週は9日間とみなされる。報道関係者の内覧日や展示会のオープニング日は、展示期間の計算から除く。

パフォーマンスアートなど、1週間に満たない期間限定で作品を展示する場合、創作者は参加報酬に加え、本協定に従った展示報酬も受け取る権利がある。

複数の創作者による展示会

複数の創作者による展示会の場合、展示報酬は、主催者の提案に従い、MU協定の対象となる創作者間で分配する。展示報酬を分配する際には、展示空間、露出、展示会における創作者の役割の違いを考慮することができる。ただし、各創作者の展示報酬は、本協定に定めた創作者一人当たりの保証額を下回ることはできない。

MU協定の対象外の作品を主な内容とする展示会に創作者が数点の作品で参加する場合、主催者は創作者と協議の上、展示期間に応じた妥当な報酬水準を交渉しなければならない。ただし、本協定に定めた保証上限額を下回らないものとする。

C. 展示報酬の保証額

各創作者は、主催者の属するカテゴリー、展示会の長さ、作品を展示する創作者の数に関係なく、常に本協定に定めた保証額を受け取る権利を有する。

D. 料金表

展示報酬の計算は、展示会開催年に有効な料金表に基づいて行われなくてはならない。スウェーデン芸術評議会は、2024年以降、MU協定の第3条に従い、物価指数に連動するMU協定の改訂版を3歴年ごとに発表する。

カテゴリー1:100,000人以上の来場者を抱える主催者

スウェーデン国内外で展示会事業を行い、年間来場者数が100,000人を超える主催者

基本報酬

1名の創作者による展示会:5,900 スウェーデンクローナ/週
2~3名の創作者による展示会:5,900 スウェーデンクローナ/週 x 1.5
4~8名の創作者による展示会:5,900 スウェーデンクローナ/週 x 2
9名以上の創作者による展示会:5,900 スウェーデンクローナ/週 x 2.5

展示報酬の計算
第12週まで、基本報酬の100%が展示報酬として支払われる必要がある。
第13週から第16週まで、基本報酬の75%が展示報酬として支払われる必要がある。
第17週から第20週まで、基本報酬の50%が展示報酬として支払われる必要がある。
第21週以降、基本報酬の25%が展示報酬として支払われる必要がある。
創作者は、展示会の長さや創作者の数に関係なく常に、少なくとも本協定に記載されている保証額を受け取る権利を有する。

カテゴリー2:50,000~100,000人の来場者を抱える主催者

スウェーデン国内外で展示会事業を行い、年間来場者数が50,000~100,000人の主催者

基本報酬

1名の創作者による展示会:4,500 スウェーデンクローナ/週
2~3名の創作者による展示会:4,500 スウェーデンクローナ/週 x 1.5
4~8名の創作者による展示会:4,500 スウェーデンクローナ/週 x 2
9名以上の創作者による展示会:4,500 スウェーデンクローナ/週 x 2.5

展示報酬の計算
第12週まで、基本報酬の100%が展示報酬として支払われる必要がある。
第13週から第16週まで、基本報酬の75%が展示報酬として支払われる必要がある。
第17週から第20週まで、基本報酬の50%が展示報酬として支払われる必要がある。
第21週以降、基本報酬の25%が展示報酬として支払われる必要がある。
創作者は、展示会の長さや創作者の数に関係なく常に、少なくとも本協定に記載されている保証額を受け取る権利を有する。

カテゴリー3:10,000~50,000人の来場者を抱える主催者

スウェーデン国内外で展示会事業を行い、年間来場者数が10,000~50,000人の主催者

基本報酬

1名の創作者による展示会:3,200 スウェーデンクローナ/週
2~3名の創作者による展示会:3,200 スウェーデンクローナ/週 x 1.5
4~8名の創作者による展示会:3,200 スウェーデンクローナ/週 x 2
9名以上の創作者による展示会:3,200 スウェーデンクローナ/週 x 2.5

展示報酬の計算

第12週まで、基本報酬の100%が展示報酬として支払われる必要がある。
第13週から第16週まで、基本報酬の75%が展示報酬として支払われる必要がある。
第17週から第20週まで、基本報酬の50%が展示報酬として支払われる必要がある。
第21週以降、基本報酬の25%が展示報酬として支払われる必要がある。
創作者は、展示会の長さや創作者の数に関係なく常に、少なくとも本協定に記載されている保証額を受け取る権利を有する。

カテゴリー4:来場者数が10,000人未満の主催者、または小規模な展示会の主催者

スウェーデン国内外で展示会事業を行い、年間来場者数が10,000人未満の主催者、または図書館や大使館など、同じ空間でアートと他の活動が共存する小規模な展示会の主催者

基本報酬

1名の創作者による展示会:1,700 スウェーデンクローナ/週
2~3名の創作者による展示会:1,700 スウェーデンクローナ/週 x 1.5
4~8名の創作者による展示会:1,700 スウェーデンクローナ/週 x 2
9名以上の創作者による展示会:1,700 スウェーデンクローナ/週 x 2.5

展示報酬の計算
第12週まで、基本報酬の100%が展示報酬として支払われる必要がある。
第13週から第16週まで、基本報酬の75%が展示報酬として支払われる必要がある。
第17週から第20週まで、基本報酬の50%が展示報酬として支払われる必要がある。
第21週以降、基本報酬の25%が展示報酬として支払われる必要がある。
創作者は、展示会の長さや創作者の数に関係なく常に、少なくとも本協定に記載されている保証額を受け取る権利を有する。

創作者に支払われる保証額

展示会の長さ、カテゴリー1、2、3、または4が適用されるかどうかに関係なく、創作者および展示会ごとに保証される展示報酬は、以下のとおりである:

1名の創作者による展示会:創作者あたり 7,300 スウェーデンクローナ
2~3名の創作者による展示会:創作者あたり 4,500 スウェーデンクローナ
4~8名の創作者による展示会 :創作者あたり 3,800 スウェーデンクローナ
9名以上の創作者による展示会:創作者あたり 3,200 スウェーデンクローナ

ストックホルム 2023年10月13日

スウェーデン政府を代表して

スウェーデン芸術評議会 事務局長 
カイサ・ラヴィン

団体を代表して

スウェーデン芸術家協会 会長 
サラ・エドストローム
スウェーデン写真家協会 会長 
パウリナ・ホルムグレン
スウェーデンイラストレーター・グラフィックデザイナー協会 会長 
ジョセフィン・エングストローム