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「文化庁新進芸術家海外研修制度」は、これまで数多くの芸術家に海外研修の機会を提供してきました。art for allでは、この制度がより広く活用され、さらに多くの新進芸術家が有用な海外での経験を得られるように「文化庁新進芸術家海外研修制度」を考えるワーキンググループを作り、本制度の実態を調査するべくアンケート調査を実施しました。本制度に対する応募者数は減少傾向にあり、過去10年で応募者は半数近くまで減っていることもアンケート調査実施の背景となっています。
アンケート実施概要は下記となります。
1. 実施時期:2021年1月1日〜2021年8月28日
2. 対象者:芸術分野にかかわる活動をしている者(年齢、性別を問わない)
3. 調査方法:インターネット・サイトを用いたアンケート
4. 回答者数:159名
アンケートの告知はart for allのSNSを通じて行い、art for allが用意したインターネット・サイト上のアンケートに回答する方法によって実施されました。回答者の中には過去に「文化庁新進芸術家海外研修制度」を利用した者や応募した者も多く、経験をとおした意見による有意義な調査となりました。過去に研修を受けた者からの回答では制度に対する満足度が非常に高く、研修後の活動に良い影響があったと答えている回答者が9割を超えたことから、本制度が有効に機能していることが明らかになりました。その一方で、多くの回答者から時代に合った見直しの必要性も指摘されました。具体的には、選考のオンライン化、世界情勢・物価変動に合わせた滞在費の改定、ワークライフバランスを考慮した年齢制限の撤廃など制度運用における柔軟性を求める声がありました。
このように、芸術家に海外研修の機会を提供するという制度の目的に賛同しつつも、時代変化による経済的・社会的状況に合わせた制度の見直しが必要であると考えられます。こうした見直しは結果として、日本社会がより豊かな芸術文化を享受できるための土壌づくりに大きく貢献できる機会だと思われます。
この調査結果は、2021年8月31日に文化庁に提出されました。今後もこの制度がより良いかたちで継続されることを願い、調査結果を公開する次第です。