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新刊冊子『みんなどうしてますか? アーティストの報酬 —— 持続可能なあり方に向けて』制作・PDF公開のお知らせ

2026.6.17

冊子『みんなどうしてますか? アーティストの報酬 —— 持続可能なあり方に向けて』

任意団体「art for all」の「美術分野における報酬問題を考えるワーキンググループ」は、このたび、美術分野における適切な対価のあり方と持続可能な取引環境の構築を目指した冊子『みんなどうしてますか? アーティストの報酬 —— 持続可能なあり方に向けて』(A5判・全16ページ)を制作いたしました。

本日より、どなたでもご覧いただけるPDF版の無料ダウンロード配布を開始いたします。日々の制作活動や現場運営、あるいは制度設計を考える際の一助として、ぜひご活用ください。

冊子のダウンロードはこちらから
【PDF版】『みんなどうしてますか? アーティストの報酬』をダウンロード(無料)

冊子制作の背景:個人の交渉力ではなく、分野全体の環境整備へ

美術分野の活動は、高い専門性と多くの時間、あるいは重い責任を伴う労働によって支えられています。しかし、その労働に対する対価(報酬)については十分に共有された基準があるとは言い難く、条件が曖昧なまま進行する取引が慣習化してきた現状があります。

この影響はアーティスト本人に留まらず、キュレーター、インストーラー、ライター、エデュケーターなど、美術の現場を支える多様な専門職の基盤をも揺るがしています。

art for allでは、こうした状況を個人の交渉力の問題に帰結させるのではなく、「美術分野全体の環境整備の課題」として捉え、これまで活動を続けてまいりました。その成果を社会に還元し、対話の土台とするために本冊子を企画・制作いたしました。本冊子は、アーティストと発注者が対立するためのものではなく、双方が共通の言語をもち、持続可能な関係を築くための実務的な手引きです。

本冊子の4つの見どころ

① データで見る現場:可視化されたアーティストの過酷な経済実態

2022年〜2024年にかけて実施された独自のアンケート調査結果をグラフを交えて公開しています。

  • 生活の厳しさ:回答した美術家・アーティストの75%が全収入(年収)300万円未満。62.5%が副業をしながら活動を維持しています。
  • 報酬0円の常態化:「必要経費以外の報酬(アーティスト・フィー)」が「0円」だったという回答が約4分の1(25%)にのぼります。
  • 契約の適正化への要望:支給金額の提示に「納得いかないが、受け入れざるを得ない」と回答した人が54.2%。また、95.1%が「報酬ガイドラインが必要である」と回答しており、共通基準の策定が急務であることが浮き彫りになりました。

② 海外の事例に学ぶ:諸外国におけるアーティスト報酬ガイドライン比較

「報酬が低いのは日本だけなのか?」という疑問に対し、世界の先進的な取り組みを比較分析しています。

  • カナダ(CARFAC/RAAV)の1968年から続く助成制度と連動した仕組みや、スウェーデンの「MU協定」アイルランド、イギリス、ドイツ、フランスの計6カ国の策定主体・強制力・予算区分を一覧表で分かりやすく解説し、日本に適した段階的ガイドライン構築へのヒントを提示します。

③ 法的・国際的根拠:フリーランス新法とFair Culture Charter(FCC)

単なる精神論ではなく、最新の法律と国際指針をバックボーンに、取引の「違法・適法」のラインを明確に整理しています。

  • フリーランス新法(2024年11月施行):業務内容・報酬額の明示義務、一方的な条件変更や「無償や著しく低額な条件を当然視する行為」の禁止など、発注側が守るべき最低限の取引ルールを明記。
  • Fair Culture Charter(国際指針):文化芸術分野の労働を「情熱」や「使命感」に回収せず、社会的価値を生む専門的労働として位置づける国際指針を紹介。「公正とは結果だけでなく、交渉可能性や透明性を含むプロセスである」という原則を提示します。

④ 持続可能な芸術活動に向けて:「断るため」ではなく「続けるため」の交渉方法

4コマ漫画(「アートの現場 ギリギリものがたり」)を交えて課題を身近に描きつつ、現場ですぐに使える具体的な実務の手引きを収録。

  • 報酬の『ひとかたまり』を分解する:制作費(材料費等)や諸費用(輸送費・旅費等)と、作家への純粋な支払いである「アーティスト・フィー」を別建てで考える重要性を視覚的に解説。
  • 「こんなときは要注意」フレーズ:「今回は実績になります」「みなさん同じ条件です」など、不公正な慣習を助長しやすい発注側の定番説明を可視化、注意喚起。
  • 11項目の契約確認チェックリスト:フリーランス新法で定められた義務から、美術分野特有の条件(費用負担や著作権の扱い・二次利用の明記など)までを網羅した実践マニュアル。

「交渉は『個人の勇気』ではなく、共有可能な実務(事務)であるという認識を広げていきましょう。」(本冊子より)

冊子概要

書名:『みんなどうしてますか? アーティストの報酬 —— 持続可能なあり方に向けて』
仕様:A5判 / 16ページ(表紙含む) / 非売品(Not for Sale) ※PDF版は無償ダウンロード可能
発行元:art for all 「美術分野における報酬問題を考えるワーキンググループ」
執筆・編集:木原進、作田知樹、湊茉莉、村上華子
デザイン:相馬章宏(コンコルド)
編集・イラスト:労働者協同組合HATO 文化編集部
助成・支援:公益財団法人小笠原敏晶記念財団

【目次構成】
p.2 もくじ
p.3 はじめに:持続可能な美術分野のために——無償労働を前提にしない文化へ
p.4 実態調査から①:アーティストの生活
p.5 [4コマ漫画]アートの現場 ギリギリものがたり①
p.6 実態調査から②:アーティストの報酬
p.8 海外のガイドライン事例
p.10 わたしたちの提言
p.11 [4コマ漫画]アートの現場 ギリギリものがたり②
p.12 フリーランス新法とFair Culture Charterから考える適正なアーティスト・フィー
p.13 「断るため」ではなく「続けるため」の交渉方法
p.14 [付録]フリーランス新法をふまえた実務上の注意点 アーティストのための契約確認と交渉の手引き

■ 本件に関するお問い合わせ先
art for all(美術分野における報酬問題を考えるワーキンググループ)
E-mail:info@artforall-jp.org
ウェブサイト:https://artforall-jp.org/
※メディア関係者の方で、本件に関する取材や高解像度の誌面サンプル画像等をご希望の場合も、上記メールアドレスまでお問い合わせください。